人の有難さ
この当時、私の車はボンネットを開けて右側、クーラントのエア抜き用ドレンホースのひび割れによって冷却水が漏れていたのである。
それによる立ち往生で生じた事実と、それに関わった方々への感謝と自らへの戒めを込めて記述する。
さて、既にこの症状を認知してから20日ほど経っており、少々水温が高いのは日常となっていた。
そんなわけで行きは水温が高めではあったものの、問題なく走行できていた。
問題は帰りである。おそらく行きで既に水温がかなり高めであったため、水はかなり少なかったのだろう。
今思えば、街灯が少ない田舎の夜の道を地元民の車に煽られつつ、正常な状態と同じ感覚で走らせていたのが最大のミスであった。
制限速度プラスアルファで5km程度走らせている間に水温計はかなり「H」側に寄っていたのである。
行きもこれに近い状況だったし、と軽く見ており、そのまま外房有料道路に入ったころ、エンジンが鈍い異音を出し始めたのである。
伝わりにくいが、PC用冷却ファンの回転中に爪を突っ込んで出すような音である。
慌ててクラッチを切ると、そのままストールしてしまった。
惰性で左カーブの草が茂る路外に寄せると、ボンネットから湯気が上がっていた。
付近には街灯もなく、文字通りの暗闇である。
湯気の勢いが緩やかになったところで再発進させたが、外房有料道路の千葉市内へ向かう方面は全体的に上りである。
再発進させてしばらくは走ったもの、板倉ICを過ぎた、頭上に橋がある上り坂でオーバーヒートによるパワーダウンで坂を登れなくなってしまった。
仕方がないので、有料道路を降りようとバック状態でUターンし、板倉ICで降りたのである。
その後、水を補給せねばと最寄りのコンビニに向けて車を走らせていたが、コンビニまで1km少々のあずみが丘交差点が結構な上り坂で、
途中まで上ったものの、パワーダウンで完全に登れなくなってしまった。
仕方がないので路端に車を置き、コンビニまで残り1km、さらなる上り坂を自力で走って水を買いに行ったのである。
水を買って戻り、ラジエターに水を投入。キーONで水温計が下がるのが確認できた。
「これで帰れる」と安心したのも束の間、今度はエンジンを掛けようとするがエンジンが掛からないのである。
元々バッテリーも弱っていたため、繰り返すうちにバッテリーが上がってしまった。
しばらく途方に暮れていたが、押し掛けを思い付き、やってみようとするが、停止しているのは上り坂。
悩んだ末、中央分離帯の切れ目を見つけ、「そこまで惰性でバックする」という方法を取ることにした。
中央分離帯の切れ目めがけてバックをし、切れ目でUターン。
一転下り坂になったので、喜びながら下る勢いで下り掛けを行うが、掛からない。掛からないまま3度目で完全に下り切ってしまった。
妙な水の音とともに歩道に頭を突っ込んで、車道も塞ぎながら斜めに停止。睨んだり、ホーンを鳴らしながら通り過ぎる車。
真っ青になりながら、キーを回すがやはりセルは回らない。
以前、Web で「バッテリー上がりでタクシーに助けてもらった」なんていうのを読んだことがあり、
近所のタクシー会社に手当たり次第電話を掛けてみるが、当然全社に断られてしまった。
何故素直にJAFを呼ばないかというと、当時、欲しいものがあり、そのために貯めていた貯金をできるだけ崩したくなかったという
実に下らない理由があったのだ。
結局JAFに電話し、状況を説明していると、坂を下ってきた通りすがりの60代と思われる男性が車外に。
なにやら私のことを心配して止まってくれたみたいだったので、一旦JAFとの電話を切り、その男性に事情を説明することに。
事情を説明するため、ここで初めて車外に出たのだが、ふと坂道を見ると、水で下ってきた軌跡ができていた。
男性はそれを見て、声を掛けてきたとのこと。
事情を説明すると、ブースターケーブルを取り出し、救援をして頂けることに。
10回程度チャレンジしているうちにエンジンが掛かったので、オーバーヒートの処置も行って頂けることに。
車内にクーラントが入っていた空き容器が転がっていたので、それを持って、男性の車で近所のディスカウントストアに連れて行って頂いた。
店舗のトイレの手洗い場から水を拝借しつつ、万が一の足りない場合に備えて、売り物のミネラルウォーターも購入することに。
水を補充し、エンジンを掛けるが、今度は30分ほど前に始動したはずのエンジンが何度やっても掛からない。
15回目くらいで初爆し、数回は掛かりそうな気配を見せるが、そこからセルを切ると回転しない様子。
その状態で無理にアクセルを踏んだり、チョークレバーを引いたりしているとカブって初爆も起こらなくなってしまった。
その間、水も漏れるので、セルを回す度に先ほど追加した水が道路に流れていく。
さらに15回程度、バッテリーやコイル、デスビの端子類を確認しながらセルを回していると、数秒掛かりエンスト、の状態を経てエンジンが始動したもの、音がおかしい。
コンプレッサーが作動している時のような音がして、吹けが悪いのである。
経験上、この音は片肺(=片側の気筒が点火していない)であると知っていたため、エンジンを切り、男性の工具箱からプラグレンチを借りる。
案の定、2番シリンダー(助手席側)のプラグがカブっており、真っ黒であった。
「プラグが生きてるか外した状態でセルを回してみて」との指示でやってみると、曰くどちらも「青白い」火花が出ており、
2番側も死んではいない模様。
しかし、戻すと2番は調子が悪いため、車内に転がっていた別の中古プラグを試すも、改善どころか掛からなくなってしまった。
カブったプラグに戻すとやはり片肺で始動するのである。
最終的には、男性が2番側についていたプラグのギャップを工具か何かで広くして、再び装着すると、無事エンジンが始動した。
…が、水回りは解決していないため、その解決にも時間を要した。
ラジエターキャップを完全に閉めていると、圧力が掛かりドレンから漏れてしまうが、かといってキャップを外すと、
今度はクーラント入り口から水を吹いてしまう。半開き(キャップ1回転)で試してもドレンから水が漏れてしまった。
2018年5月3日追記:この症状はガスケットが抜けた時の症状のようでした。最終的には、ラジエターの水を8分目程度に、ウォーターポンプが回転してもクーラント入り口から水が吹かないようにして、
先日水漏れ修理完了の引き取り時に判明しました。
自宅まで自走できるレベルの応急処置を終え、男性に外房有料道路入口、板倉ICのランプウェイまで送って(追走して)頂いた。
午後7時30分頃から男性の救援を受け、応急処置が終わったのは11時近かった。
別れ際に、「お礼がしたいので連絡先を」を申し出たが、断られ、「せめて携帯の番号だけでも」との申し出には、
「携帯持ってないから」と言われてしまい、3時間以上も救援と応急処置に付き合って頂いたのに、その場でのお礼しか
できなかったのが心残りである。
男性の応急処置で無事に自宅に帰れ…れば良かったのだが、もう1つ大きな事件が起きていたのである。
続く。
<2021年3月6日 当時の画像を発掘したので追加>